マレーシア「新会社法」による会社形態の分類

 

①現地法人
②外国法人の支店
③駐在員事務所

ライセンスの取得ができ、税制上の優遇措置を受けられることもあるため、①の現地法人が進出形態としてよく用いられます

マレーシア「新会社法」でよる現地法人の分類

新会社法では、下記3種類の現地法人が定められています。

現地法人とは、マレーシアにおいて新会社法を基に設立された会社を指します。

1. 株式有限責任会社
株式有限責任会社は出資者の責任を所有株式の金額を上限とする会社形態です。これはさらに公開会社(Bhd.)と非公開会社(Sdn. Bhd)に区分されます。
非公開会社は、下記のように定義されています。

・株主数50名以下
・株式の譲渡制限
・株式等の一般公募不可

一方で公開会社は非公開会社以外の株式有限責任会社の形態をとる会社のことを指します。

2. 保証有限責任会社
保証有限責任会社とは出資者の責任を事前に定めた出資保証額内とする会社形態です。新会社法では当該形態の会社のみ定款の作成が明確に義務付けられています。

3. 無限責任会社
無限責任会社とは出資者の責任に制限を課さない会社形態です。
また、支店・駐在員事務所については下記の通りです。

マレーシア「新会社法における外国法人支店と駐在員事務所について

1. 外国法人支店
外国法人が事業を行う場合は新会社法に基づき、CCM(Companies Commission of Malaysia)に外国法人支店としての登録を行うことが義務付けられています。
マレーシア政府は現地法人を設立することを奨励しているため、支店設立の認可が降りるかどうかは政府の裁量次第となっています。ただし、一般的に、事業を行うことを目的とした外国法人支店の設立が許可されておりません。

2. 駐在員事務所
駐在員事務所とはマレーシアでの事業を行う前の市場調査等を目的とした通常設置期間2年の設立形態であり、営業活動は認められていません。
本来、マレーシア政府は現地法人形態での設立を推奨しているため、外国法人支店と同様に、政府の裁量によるところが大きく、駐在員事務所の設立・更新には適切な理由の説明が厳しく求められます。

マレーシアにおける外資規制について

各業種における出資比率規制を簡単にご紹介いたします。

1. 製造業
2003年に製造業の外資出資比率規制は撤廃され、原則、100%外資が認められております。

2. 金融機関
2013年金融サービス法の施行により外資規制が撤廃されました。
ただし5%以上の株式を取得する場合には、外資・内資にかかわらず、マレーシア中央銀行の事前承認が必要となります。(法的規制はございません。)

3. その他流通・サービス業など
次の業種に関しましては外資参入が禁止されております。
①スーパーマーケット/ミニマーケット(販売フロア面積が3,000平方メートル未満)

*1販売面積が3,000~5,000平方メートル未満の独立したスーパーマーケット
⇒MDTCCガイドラインでは「スーパーストア」と定義され、同省の規定・条件を満たせば、

外国資本100%による参入が認められております。

*2デパート内に設置されたスーパーマーケットについては、販売面積2,000平方メートル未満に限って、

外国資本100%の参入が認められております。

②食料品店/一般販売店
③コンビニエンスストア
⇒外資が入ったコンビニエンスストアに関しましては、2018年12月現在、事前認可を得なければならないとされております。

しかし、認可要件の内容については明らかにされておりません。

④新聞販売店、雑貨品の販売店
⑤薬局(伝統的なハーブや漢方薬を取り扱う薬局)
⑥ガソリンスタンド
⑦常設の市場(ウェットマーケット)や歩道店舗
⑧国家戦略的利益に関与する事業
⇒水、エネルギー・電力供給、放送、防衛、保安等に関し、マレーシア政府は、

外資出資比率の上限を30%または49%と定めております。
⑨布地屋、レストラン(高級店でない)、ビストロ、宝石店など

その他、ステータスを取得することで、100%外資で会社を設立することが可能となる場合もあります。

上記以外のサービス業に関しましては、基本的に100%外資での設立が可能となります。

業種ごとの所管官庁は、以下の通りです。

  • 製造業:マレーシア投資開発庁(MIDA)
  • 卸・小売業、販売、レストラン、サービス:国内取引・協同組合・消費者庁(MDTCC)
  • 観光業:観光省(Ministry of Tourism Malaysia)
  • 運送業:陸上公共交通委員会(Land Public Transport Commission)税関(Royal Malaysian Customs)
  • 建設業:建設業開発庁(CIDB)

カンパニーセクレタリ―(会社秘書役)とは

会社秘書役の概要
会社秘書役(カンパニーセクレタリ)とは、新会社法により規定されている会社の設立等や各種登記の書類作成、実際の政府手続きの役割を担う担当者であり、企業ごとに会社秘書役を任命し、登記を行う必要があります。

しかし、組織のコンプライアンスを担う重要な役割であるので、どの秘書役に依頼するかによって、組織の管理も大きく変わってきます。注意事項を下記します。

1.  会社秘書役の設置義務

マレーシアのすべての会社には、1人以上の会社秘書役の設置が義務付けられています。

2. 会社秘書役の要件

会社秘書役の資格は、マレーシアを主要な居住地とする18歳以上の自然人である必要があります。かつ有資格者であることです。

また、会社秘書役協会などの定められた組織の会員か、もしくはマレーシア会社登記局により許可を得ていなければなりません。

3. 会社秘書役の選任・解任

会計秘書役の選任・解任は、取締役会の決議によって行われます。

 

マレーシアの法人税の特色

2020年現在、マレーシアの法人税率は課税所得の24%となっています。
ただし、中小企業(払込資本金が250万リンギ以下)でかつ年間売上が5,000万リンギ以下の場合、課税所得60万リンギまでは税率17%、課税所得60万リンギを超える分は税率24%となります。

マレーシアの居住法人に対する課税

法人は居住法人および非居住法人に分類されます。
居住法人とは、その営業の管理、支配がマレーシア内で行われている法人と定義されています。つまり、取締役会などの意思決定がマレーシア国内で行われている会社を意味しています。この考え方においては外国法人であっても、マレーシア国内で実質的な事業を行っている場合には居住法人と同様の課税を受けることになります。

月次納付

事業年度開始日より30日前までに当該事業年度の年間法人所得税の見積もり額をマレーシア国税庁に提出する必要があります。そして、この見積もり額に基づいて、基準期間の第2ヶ月目から毎月15日までに国税庁に対して月次納付を行うことになります。

この見積もり額に基づく月次納付の12か月分の累積額が最終税額を30%以上下回った場合、不足額の10%相当がペナルティーとして課せられます。
しっかりと納税額を算定して、予測と立てておかなければ、ペナルティーが発生してしまうことになってしまいます。この見積もり額は事業年度の6ヶ月目および9ヶ月目に変更を申請できますので、9ヶ月目の変更は特に慎重に見込みを計算しておくことになります。

申告納付期限

事業年度終了日から7ヵ月以内に確定申告書を提出するとともに、月次納付累計額と確定税額との差額を納付します。

 

マレーシアで事業を展開する際生じる主な税金

事業を展開する際に生じるその他の主な税金

売上税サービス税(SST)

①課税物品の輸入、国内で登録事業者により製造される課税物品や特定の課税サービスが対象。 ②税率は売上税が5%又は10%、サービス税が6%(既存の物品・サービス税(GST)は2018年8月31日をもって廃止)。

不動産利得税(RPGT)

不動産売却から生じたキャピタルゲイン及び不動産主体会社(総資産に占める不動産の割合が75%以上で5名以下の株主に支配されている会社)の株式売却から生じたキャピタルゲインに対する課税。税率は法人の場合10%~30%(処分までの期間により変動)。

印紙税

広範囲の文書に対して課税されます。 税率は0.1%~4%(契約金額や文書の性質に応じて税率が異なる)。

源泉税

非居住者に対する利子、ロイヤリティー、国内で行われる役務提供、動産の貸借及びその他の所得の支払いに対し、10%~15%の源泉税が課税されます。2019年度改正により、課税の対象となる役務が技術的な性質を有するか否かは課税の有無に影響を与えないこととなりました。

 

マレーシアの個人所得税の特色について

マレーシアの個人所得税の特色

つづいて、マレーシアの居住者個人にかかる税金として個人所得税について解説いたします。

個人所得税を計算する場合、対象となる個人が居住者であるか非居住者であるかにより、所得範囲、税率および税率控除の有無等が異なります 。したがって、個人の所得税を計算する場合には、まず対象となる個人が居住者か非居住者であるかを判断する必要があります

居住者、非居住者の定義

居住者の判断はマレーシアでの滞在日数を基準とします。国籍や本籍、出生地を基準とすることはありません。あくまでマレーシアの滞在日数に基づいて居住者か非居住者かを判断されます。

**次のうち、ひとつでも該当する場合は所得税法上の居住者とみなされます

  • 当暦年に182日以上滞在した場合。(この滞在中、就労していたか否かは関係ありません。)
  • 当暦年の滞在日数は182日未満であるが、前暦年からあるいは翌暦年に連続して182日以上滞在する場合、当暦年において所得税法上の居住者となります。例えば、赴任初年度の暦年には40日しか滞在しないが、翌暦年からは1年を通じてマレーシアにおける勤務が予定されている場合や、逆に、日本への帰国が決まって、当年度の滞在日数が40日しかないという場合などを想定しています。
  • 当暦年で90日以上滞在しており、かつ直前の4暦年中、3暦年において、①居住者である場合、または②90日以上マレーシアに滞在している場合には当暦年において居住者となります。
  • 過去3暦年および直後の暦年においても居住者となる場合、当暦年においても居住者となります。マレーシア人が1年間だけマレーシア国外にでるような場合などを想定しています。

マレーシアにおいて課税対象となる所得とは

居住者かどうかを判断したうえで、次は課税対象となる所得があるかどうかを判断します。

マレーシア源泉所得とみなされる給与所得は以下の通りです。

  • マレーシア国内で就労している限り、雇用者が海外法人であっても、また給与が海外で支給された場合であってもマレーシア源泉所得とみなされます。
  • マレーシアでの業務と関連する海外出張は国内の就労とみなされます。
  • マレーシア国外で就労している場合であってもそれが国内の業務と関連不可分のものである場合は国内の就労とみなされます。
  • マレーシア法人の取締役として受ける報酬は本人が国内に居住しているか否かを問わず全てマレーシア源泉所得となります。
  • マレーシア居住者により運営されている船舶、航空、運輸業において実施される就労は全てマレーシア国内での就労とみなされます。

2018年度以降の所得税率表

総所得金額から各種所得控除額を差し引いた課税所得金額に対して、次の累進課税を乗じて所得税額を算出します。

年度の所得金額(リンギット) 税率(%)
1-5,000 0%
5,000 – 20,000 1%
20,001 – 35,000 3%
35,001 – 50,000 8%
50,001 – 70,000 14%
70,001 – 100,000 21%
100,001 – 250,000 24%
250,001 – 400,000 24.5%
400,001 – 600,000 25%
600,001 – 1,000,000 26%
1,000,000超 28%

 

申告納付手続き

マレーシアでは、毎月税額の納付を行ない、その後年次の確定申告で 過不足分の調整を行うという流れになっています。そのため雇用主は 源泉徴収という形で毎月15日までに徴収した源泉税をマレーシア内国歳入庁に支払います 。

マレーシアでの個人所得税の申告には以下の種類があります 。

  • 所定の用紙に直接に記入し窓口で申告
  • e-filingというインターネット上でのシステムを利用した申告

納税スケジュール

マレーシアにおける個人所得税の課税対象期間は1月1日から12月31日であり、当該課税年度の翌年の4月30日(e-Filingでの申告の場合は5月15日)までに申告及び納付を行う必要があります。雇用主は従業員に対して給与支払明細書を作成し交付します 。

マレーシアで会社を設立する際の資本金と就労ビザについてQ&A

 

質問1:外国人や外国法人による100%出資で会社を設立することはできますか?

回答:多くの業種で、外国資本100%保有の会社による事業活動が認められています(IT企業、飲食業、製造業、コンサルティング業など。但し、一部例外有り)。以前は、マレーシア資本を入れることを求める規制が多くありましたが、それらの大半は撤廃されました。外資100%が認められたことにより、少数株主の保護や権利行使等に注意を払う必要がなく、極めて安定した事業運営が可能です。

質問2:株主は何名必要ですか?

回答:株主は2名必要です。

但し、法人が株主となる場合は1名(その法人のみ)でも認められますので、マレーシア国内に完全子会社設立可能

質問3:株主はマレーシア国内に居住している必要はありますか?

回答:必要ありません。なお、株主には居住要件は求められていないものの、会社の役員(Director)については、最低2名のマレーシア居住者を選任することが求められています。

ただし、マレーシア人である必要はありません(マレーシア在住の日本人で結構です)

質問4:資本金として、最低いくらを出資する必要がありますか?

回答:マレーシア会社法が規定する払込資本金の最低額は、2RM(マレーシアリンギット。2020年7月現在、1RM=約25円)となっています。しかし、マレーシア法人の役員(director)や駐在員のEmployment Pass(外国人がマレーシア国内で就労するための在留許可)を取得するためには、2RMでは足りません(Employment Pass取得のために必要とされる最低資本金は質問6をご覧ください)。

また、飲食業や小売業に関しては、ライセンス取得のために、最低100万RM以上の払込資本金が求められます(ただし、例外有り)。

質問5:Employment Passとは何ですか?

回答:外国人がマレーシア国内で就労するために必要となる在留許可のことです。

「就労ビザ」、「雇用パス」、「ワークパーミット」、「労働ビザ」などと言われることもあります。

質問6:Employment Passを取得するためには、いくらの資本金を出資する必要がありますか?

回答:外資100%の会社であるか、マレーシア資本が入っている会社であるかによって、求められる最低資本金は変わります(マレーシア資本の占める比率が大きいほど、求められる資本金額は小さくなります)。

・外国人資本100%の会社の場合、払込資本金50万RM以上。

・マレーシア資本との合弁会社の場合(30%以上がマレーシア資本)、払込資本金35万RM以上。

・マレーシア資本100%の会社の場合 払込資本金25万RM以上

※2020年7月 1RM=約25円。

但し、上記に関わらず、飲食店業や小売業等の一定の業種に関しては、100万RM以上の払込資本金としなければライセンスが取得できず、そして当該ライセンスがなければEmployment Passの取得は原則できません(但し、例外あり)。また、マレーシア資本との合弁であっても、KEYPOSTに就く外国人の雇用パスについては、外国資本保有分につき50万RM以上の出資が求められることがあります。なお、上記はあくまでも求められる「最低額」ですので、上記金額を出資したからといって、必ずしもEmployment Passが取得できるわけではありません。

以上、「マレーシアで会社を設立する場合の資本金と就労ビザについて」でした。

まとめ
  • 就労パスやライセンスの取得が不要な会社であれば、法律上求められる資本金は非常に小さい。
  • しかし、就労ビザやライセンスが必要な企業は、そこそこの金額を出資する必要がある。
  • ただ、外国資本による100%保有が認められているので、安定した事業運営ができる国である。

 

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